こんにちは!モカです。
今回は小説、道尾秀介さんの「いけない」をご紹介します!
この本は「体験型ミステリー」と言われ、王様のブランチでも紹介され話題となった作品です。
騙されては、いけない。けれど絶対、あなたも騙される。
『向日葵の咲かない夏』の原点に回帰しつつ、驚愕度・完成度を大幅更新する衝撃のミステリー!
第1章「弓投げの崖を見てはいけない」
自殺の名所付近のトンネルで起きた交通事故が、殺人の連鎖を招く。
第2章その話を聞かせてはいけない」
友達のいない少年が目撃した殺人現場は本物か? 偽物か?
第3章「絵の謎に気づいてはいけない」
宗教団体の幹部女性が死体で発見された。先輩刑事は後輩を導き捜査を進めるが。どの章にも、最後の1ページを捲ると物語ががらりと変貌するトリックが……!
ラストページの後に再読すると物語に隠された〝本当の真相〟が浮かび上がる超絶技巧。
さらに終章「街の平和を信じてはいけない」を読み終えると、これまでの物語すべてがが絡み合い、さらなる〝真実〟に辿り着く大仕掛けが待ち受ける。「ここ分かった!?」と読み終えたら感想戦したくなること必至の、体験型ミステリー小説。
引用:「いけない」道尾秀介 Amazon.co.jp 紹介ページ
推理小説は刑事や探偵が事件を解決して、読者に謎解きをしてくれるのが一般的ですよね。
ですがこの本は、真実をあなた自身で明かさなければいけません!
各章の最後には写真が載っているのですが、それを見てあなた自身が謎を解く。これがこの本の醍醐味なんです。
あなたは物語の「本当の真相」に気づけるでしょうか?
コチラの本はじっくり集中できる場所で、一人で読むことをおススメします!
些細な一文も見逃してはいけませんよ。。。
・自分でがっつり推理したい
・意味が分かると怖い系の話が好き
・最後のどんでん返しが好き
あらすじ
この本は第1章~4章で構成されており、各章別々の物語となっています。
本書にはちょっと変わった使用法があるんですね。
本書のご使用方法
- まずは各章の物語に集中します。
- 章末の写真をご覧ください。
- 隠された真相に気づきましたか?
- 「そういうことだったのか‼」
だまされる快感をお楽しみください。
※再読ではさらなる驚きを味わえます。
ちなみに私は何回も読みなおしました。(笑)
写真を見ることによって、文章だけでは分からなかった真実が現れてくるんですね~。
真実に気づいた瞬間ゾクッととしてしまいました!
第1章 弓投げの崖を見てはいけない
弓投げの崖を決して見てはいけない…崖の上には霊たちが集まっており、目が合うとあの世につれていかれるから…
そんな不吉な場所で自動車の衝突事故にあってしまった安見邦夫。
そして事故を引き起こした3人の若者たち、ナオ、森野雅也、森野雅弘。
その事件を調査する隈島刑事。
安見邦夫の妻である安見弓子。実は彼女は隈島刑事の元恋人であり、夫が事故にあってからというもの、新興宗教団体「十王還命会」の連日の訪問に悩まされていた。
ある日、衝突事故を起こした張本人であるナオが殺害されているのが発見される。しかもそこは安見邦夫が事故にあった「弓投げの崖」があるトンネルと同じ場所だった。
その後、森野雅也の弟である森野雅弘が行方不明に。
また取り調べを受けていた森野雅也は、警察の目を抜けて逃走する。
そして、七夕祭りの夜にまた悲劇は起こってしまう。
誰が死に、誰が生き残ったのか?
第2章 その話を聞かせてはいけない
中国から日本へ引っ越してきた小学生の珂(カー)。
フルネームの馬珂(マーカー)は日本語にすると「バカ」と読めるため、カーは小さい頃から同級生にいじめられていた。
そしてカーは時おり彼の前に現れる中国の妖怪(ヤォグァイ)の幻想にも悩まされていた。
そんなカーに唯一話しかける同じクラスの山内。
ホームレスに暴力を振るわれていた山内をカーが目撃したのがきっかけで、二人は話すようになったのだが、カーは気味の悪い彼が正直苦手だった。
ある日カーはえんぴつを万引きするため、おばあさんひとりが店番をしている「古関文具店」に入る。
しかし、おばあさんの代わりにいたのは、見たことのない男の人。
背を向けて立っており、カーが店に入ってきても動こうとしない。その男の人の奥にみえるのは、横向きになったおばあさんらしき人の足。
おばあさんが殺されたと思い、怖くなったカーは店を飛び出す。
翌日、カーは真相を確かめるため再び「古関文具店」を訪れるが、死んだと思ったおばあさんは生きていた。
自分が見たものが間違いだったのかと混乱するカー。
彼が見たのは幻想だったのか。それとも…?
第3章 絵の謎に気づいてはいけない
新興宗教団体「十王還命会」の幹部である宮下志穂が自宅マンションで遺体となって発見された。
発見者は、「十王還命会」支部長の守谷巧。そしてマンション管理会社の社長である中川徹。
守谷は連絡の取れない宮下を心配してマンションを訪れたが、呼び鈴を押しても彼女は現れない。
そこで守谷はマンション管理会社の社長である中川徹に連絡を取って事情を説明し、部屋を開けるよう頼む。
マスターキーを使って開錠すると、宮下は玄関に座り込んだ格好で首には延長コードが巻かれており、そのコードは室内側のドアノブに結び付けられていた。
その状態から自殺だと思われたが、この事件を担当する新米刑事の水元は自殺に納得がいかない。
守谷が怪しいとにらんだ水元は、先輩刑事の竹梨と共に捜査を始める。
宮下の死から数日後、「弓投げの崖」で遺体が発見された。身元はマンション管理会社の社長「中川徹」だった。
遺体とともに中川のものと思われる手帳が見つかったのだが、その手帳には奇妙な絵が描かれていた。
この絵の意味とはいったい…?
第4章 街の平和を信じてはいけない
第4章は、第1~3章に出てきた人物たちのその後のお話です。
一見幸せそうに見える日常の風景。でも、本当にこの街は幸せなのでしょうか?
真実を知った「あなた」は、この物語をどう思うでしょうか???
感想・考察 ※ネタバレあり!
ここからは、本書の感想と考察です!がっつりネタバレしていますので、未読の方はご注意下さい!!!
私なりの個人の解釈なので、「これ違うんじゃない?」というのも出てくるかもしれませんが、ご容赦ください!
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第1章 弓投げの崖を見てはいけない 考察&感想
この物語の騙されポイント
- 安見邦夫は死んでいない
- 死んだのは息子の「ナオヤ」
- 邦夫がつぶやいていたのは犯人の名前ではなく息子の名前だった
ミスリードされまくって悔しいなぁと思った矢先。最後の最後にどんでん返しがきましたね!
1章のラストで、車に轢かれ死んだのは「安見邦夫」だと思いましたが、まんまと騙されました!
耳を刺すブレーキ音。その中で聞こえた重たい響き。人影が暗い地面に落下し、それを追いかけるようにして、その手に握られていたものがアスファルトに転がる。
路傍でねじれた身体は、もうぴくりとも動かなかった。(P.87)
この文を見て、邦夫が車に轢かれ、持っていた一本の矢を手から離したのだと思っていました。
が、しかし!章の最後にある地図を見ると轢かれたのは安見邦夫ではないとわかります。
地図は隈島刑事がゆかり荘を手書きで追加したものです。
二人して笑ったとき、前方の暗がりにゆかり荘の外壁が見えてきた。吉住がアクセルを踏み込み、バンはスピードを上げる。エンジン音が高まり、周囲の景色が勢いよく背後に流れる。宮下は足を組み、シートにゆったりと背中をあずけた。しかし、ゆかり荘の前を抜けようとしたとき、突然フロントガラスの右側から人影が現れ、鈍い激突音とともに闇の中へ弾き飛ばされた。(P.73)
吉住の車は、シーラインからゆかり荘へと向かっていきました。
もし安見邦夫が轢かれたのであれば、フロントガラスの左側から現れるはずなんですよね。
なので、死んだのは安見邦夫ではないとわかります!
そしてあの日、同じ時間帯に「ゆかり荘」に向かっていた人物があと2人いました。
隈島刑事と森野雅也です。
この二人も手にあるものをもっていました。
隈島刑事➡ラークの箱 森野雅也➡包丁
この二人の行動を見れば、誰が車に轢かれたかがわかります!
森野雅也の行動
そばにいたカップルを突き飛ばし、森野雅也は駆け出した。甲高い竹笛の音が間近で響いている。祭り囃子を鳴らしながら、大きな山車がスーパーの前を移動していく。それを追い越し、夢中で走る。このまま商店街の南端まで行き、左へ曲がればアパート前の路地に出る。(P.77)
雅也は商店街を出たあと、アパート前の路地に出て南から北に向かう形でゆかり荘へ向かいました。
そうすると、前から向かってくる車に気づかず目の前に飛び出す、というのは不自然なんですよね。
隈島刑事の行動
周囲に視線を走らせる。祭り囃子を乗せた山車が目の前をふさいでいる。隈島は人混みを搔き分けて動いた。山車の向こうにタイヘイの看板が見える。ゆかり荘へ向かうには、商店街を南端まで抜けて左へ走れば十分ほどだ。しかし、この人混みを考えると、その倍はかかるだろう。先に商店街を出て路地を走った方が早いかもしれない。距離は多少伸びても、時間は縮まる可能性がある。そう考えると同時に、隈島は山車の背後を抜けて、路地にかけこんでいた。(P.84)
地図を見てみると、商店街を抜けゆかり荘の目の前に繋がる路地がありますね。
隈島はその路地を抜けだした直後、車のフロントガラスの左側から飛び出したと考えるのが自然です。
とすると、車に轢かれたのは隈島であるということがわかります!
弓子を助けようとした隈島が死んでしまうのは、なんとも悲しい結末。
あとこの物語を読んだあとは「新聞をちゃんと読もう!」と思いました。。。
何事も、正確な情報を得ることが大切!ってことですね。
第2章 その話を聞かせてはいけない 考察&感想
私的に一番心に残る作品が、この2章の物語です。
ホラーチックな物語ではありますが、最後はある意味ハッピーエンドではないでしょうか。
最初の方は読んでいて少し辛い描写が多いですね。。。
カーがいじめられている様子は、彼の孤独や辛さを感じて心苦しくなりました。
「シィナンはそばに来た人の袖をつかみ、掴まれた人は死んでしまう。」カーが祖父から聞いた中国の怪物の話は、彼の心に重くのしかかります。
そんな彼の不安や辛さの心が「シィナン」を生み出し、幻想としてカーの前に現れたのだと思います。
最初は、カーの幻想だと思われていた怪物は実在していて、おばあさんと男に崖から落とされそうになっているカーを助けてくれたんだ。。。
と、思ったのですが!2章最後にある写真を見ると…インタビューを受けているおばあさんとその甥の背後にある車。そこに少年らしき人物が今にも乗り込もうとしている姿が写っています。そして彼の着ている服には「H」らしき字が見えるんですね。。。
いつも着ている、胸にHAPPYと書かれた白いトレーナー (P129)
とあるように山内はいつもこのトレーナーを着ています。
つまり、山内は車に乗っていて、崖から突き落とされそうになっていたカーを助けるため、おばあさんと甥を崖から突き落としたのだと思われます!
「助けられたから、お返ししなきゃ」と言うように、山内はカーにお返しする機会をうかがっていました。
そして山内が犯人だと確信させる文がこちら。
カーが文具店から出てきて山内と遭遇したときの場面を思い出してください。
そこに立っていたのは山内だった。上半身をわずかにこちらへ傾け、弓なりになった両目が持ち上がり、唇がいまにも動き出そうに隙間をあけている。(P129)
そしてカーが崖でおばあさんと男の間にいる「あいつ」を見たとき。
絶叫のような音を立てるその風の中で、あいつは珂に向かって訪ねるような顔をしてみせた。珂は自分の唇の左右を、固い針金のように持ち上げた。相手は両目を弓なりに細めてこたえた。P.149
「弓なりの両目」という描写からも、崖に立っていた人物は山内だと言えます。
なので崖から二人を突き落としたのは山内だと考えることができます。
唯一、カーは救われてよかったと思える主人公だったので、この最後は割と好きです。
怪物であるしいなんより人間(しかも子どもである)山内の方が怖いです。。。
3章~4章の感想、考察は後日更新します!お楽しみに☆
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